「ひと 鍋島」犬尾貞秋さん(鍋島校区社会福祉協議会会長他)

鍋島公民館

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「ひと 鍋島」

今回は、鍋島校区で長年にわたり地域の様々な組織・団体で活躍されている犬尾貞秋さんにお話を伺いました。犬尾さんは現在、鍋島校区社会福祉協議会、鍋島長生会、鍋島地区民生委員・児童委員協議会の3つの組織の会長のほか、佐賀市民生員・児童員協議会と鍋島校区社会人権・同和教育推進協議会の副会長も務めていらっしゃいます。 

犬尾さん、まずは簡単なご経歴を教えてください。(以下、敬称略)

犬尾:私は2007(平成19)年まで42年間、佐賀県警察官として勤務、そのうち33年余りは刑事第一課・捜査第一課で盗犯刑事として勤務しました。その間の事件検挙でよく覚えているのが、昭和50年の「佐賀駅等に対する爆破予告事件」、昭和62年に佐賀市内で発生した「一都一道6管区15府県におけるスナック等対象の出典荒し事件」、昭和63年の「佐賀信用金庫鳥栖支店におけるけん銃使用強盗事件」の被疑者の逮捕です。現役時代から地域活動の役職の相談を受けていたのですが、県内転勤を伴う、昼夜問わずの仕事であったため、平成19年3月の定年退職の時点で、地区民生委員をお引き受けしました。地区や校区活動への協力という思いからです。地区自治会長、鍋島校区自治会長会会長や鍋島まちづくり協議会初代会長等も歴任しています。

――そうでしたか。刑事さんの仕事はハードでかっこいいイメージがありますが、実際はどうでしたか。

犬尾:テレビドラマのような格好良さは、勿論ありませんでした。しかし大変やりがいのある仕事で、誇りをもって頑張ることができました。刑事の仕事の大変なところは、いつ呼び出しがかかるかわからないことです。また"現場捜査活動"が仕事の基本です。42年の勤務の中で私は15回転勤しました。捜査活動には住民の方々の協力が不可欠ですから、日頃から行く先々で地域の人々や団体の方々と積極的にお付き合いし交流しました。また一人住まいの高齢者等の孤独死の現場に医師とともに立ち会うこともありました。民生委員として高齢者への声掛けや見守りに力を入れているのはこうした経験からでしょうか、日常の見守りで孤独死を少しでも減らしたいという思いは確かにあります。

――すると、犬尾会長の地域活動は、"地域の安心・安全を守りたい"というのが大きな原動力となっているわけですね。

犬尾:共生社会が叫ばれる今日、縁あって同じ地区に住んでいるご近所さん同士、誰もがここに住んでよかったと思いたいですよね。それには、まずは安全・安心な地域づくりが基本です。鍋島地区の民生委員・児童委員さんには子どもから高齢者まで声かけをしながら、つながりを絶やさないようにと、日々見守りと声掛けの活動をお願いしております。

――民生委員や児童委員の仕事はどのようなお仕事なのでしょうか?

犬尾:通称「民生委員」と呼ばれていますが、正式な呼称は、「民生委員・児童委員」です。委員の仕事は、民生委員法第1条に「社会奉仕の精神をもつて、常に住民の立場に立って相談に応じ、及び必要な援助を行い、もつて社会福祉の増進に努めるものとする」と記載されています。原点は大正6(1917)年公布の「済生顧問設置規定」制度です。民生委員は、地区自治会長さん、市長さんの推薦により、厚生労働大臣から委嘱を受けた人です。身分は地方公務員の「非常勤特別職」です。民生委員の活動は戸別訪問が主体ですので、やはり委員は地域で信用・信頼される方に引き受けていただきたいです。ただ最近ではなり手不足というのが一つの課題です。

――地域の人々に寄り添った活動という意味では、民生委員の仕事は自治会長の仕事と類似する部分もあるのではないですか。

犬尾:そうですね。私自身も自治会長を6年経験しましたが、鍋島校区の場合、各自治会長の任期はほとんど1年で、民生委員は3年です。よって自治会長の仕事が十分理解されないまま交替となり、引き継ぎも十分ではないケースもあるように感じます。個人情報には十分注意していただき、自治会長と民生委員が連携しながら地域の見守りを強化するというのが理想ではないかと思います。

――犬尾さんは鍋島のまちをどのように見てこられましたか。

犬尾:現在の佐賀大学医学部の前身である佐賀医科大学が昭和53年に開校して以来、鍋島はアパートやマンションなどの集合住宅が増加し、農村地帯から新興住宅地へ急変しました。私とほぼ同世代が移り住み、町区対抗運動会やいかだの嘉瀬川下りなど、大掛かりな行事もたくさんやっていました。今は若い世帯も他地域から入ってきていただいていますが、人と人との関係性が昔とは何か違うものを感じています。

――時代の変化ということでしょうか。

犬尾:そうですね。ただ、時代や人と人の関係性が変わっても、冒頭に申し上げた通り、私は地域での声かけと居場所づくりを継続していきたいですね。私が住む医大北の自治公民館では、毎月第3日曜日に、お年寄りが集うサロン行事が開催されています。お弁当付きの定例会で、いご手玉大会など、会員同士が気軽に楽しめる会です。

――鍋島校区の長生会のことも少し教えてください。

犬尾:鍋島校区の20の自治会中、12の自治会で長生会活動をしています。校区全体では月1回の定例会を鍋島公民館で実施しています。入会はほとんどが65歳以上ですが、地区によっては60歳以上のところもあります。是非加入をお願いします。また現在長生会が存在しない自治会でも設立することができます。

――では最後に今後の抱負を教えてください。

犬尾:私が最初に校区の役を引き受けたのは、現役時代に転勤等で地元の方々にご迷惑をおかけしたこと、また仕事上でご協力を頂いたことへの恩返しをしたいという気持ちからです。歳を重ねる毎にいろいろ依頼を受けることとなり、今では「役を引き受けているから元気で健康」「健康だから役を引き受けている」の相乗効果と思い、頑張っています。

また、人間関係、金銭関係、養育と教育等、多種多様な問題が発生している今日、初期対応としての擬律判断はできるだろうとの思いで、地域の問題等に対応しつつ、お互いに思いやりの気持ちをもって、地域住民の安全・安心なまちづくりと仲間づくりを目指していきたいと思っています。

――本日はお話ありがとうございました。  

 

                   聞き手:鍋島公民館館長 岸川いづみ