去る3月30日(水)三瀬公民館において、「三瀬の持続可能な未来に向けて」と題し、昨年4月以降実施された佐賀市地域政策課主催の「小さな拠点づくり」検討支援事業についての成果報告会及び講演会が開催されました。
この検討支援事業は、平成26年の政府戦略を受け、人口減少等の社会環境の変化の中で、それぞれの中山間地域等の人々が自律的・持続的にまちづくりを行うための後押しをする取り組みです。
この事業の中心的役割をされたのは、国内だけでなく海外のまちづくり事情にも精通されている持続可能な地域社会総合研究所所長の藤山浩氏で、同氏より一年間の成果報告等が行われました。
この報告会においては、まず、5年前に多くの世代で人口流出が著しかった奈良県の川上村等をとりあげ、今日ではそれが全国2位の社会増減率にあるとし、全国的にそういう例が少なくなく、田園回帰の傾向がみられるとの見方を示されました。しかし、その背景には地域の取り組みとして、暮らし体験や仕事と住まい紹介等の活動とともに分散した集落の暮らしを総合的にサポートする「小さな拠点」の努力の実態があること等が紹介されました。 次に、三瀬の人口分析・予測と望ましい筋書きについての藤山氏の見解を説明されました。率直なところ、三瀬は、想定以上に厳しい状況にあるとのことです。現在の村の主力世代は70歳前半であり、40歳代より若い世代の人口流出が多く、通常は高校大学等就学期以降には戻ってくる30~40歳代が戻ってきていないとのことで、これは非常に大きな不安要素で、今後5年間の取り組みが重要であるとされました。 望ましい筋書きの一つとしては、現在の出生率1.29が1.8以上になり、20歳前後の人口流出率が現行水準であるとしても、20歳代前半の男女3組、30歳代子連れ夫婦3組及び60歳代定年帰郷夫婦3組、計21名程度の年間の定住者の増加があれば、1000人以上の村として維持し得ると見積もられています。 これに関連して、三瀬村以上に厳しい状況にあり、このままでは小学校がなくなるという危機感を共有した地域とPTAが立ち上がり、移住促進の活動に取り組み始めた山口県萩市佐々並地区の紹介がありました。
そして三瀬村では、その強みと弱みを踏まえたまちづくりの努力が必要としたうえで、昨年度は、5月と7月に三瀬の強み弱み等の特色を明らかにして、移住定住促進のための3本柱を見出す検討を行い、様々な世代グループから示された提案の紹介がありました。因みに、女性チームの結論は、若い人の暮らし、仕事場、そして魅力的な教育システムだったそうです。また、それとともに三瀬村内の物流、交通及び役所や学校、様々な活動拠点のネットワークをより効率的に動かす取り組みも必要であるとの示唆もいただきました。 昨年度の検討では、その後、7月と11月に小さな拠点作りのイメージアップとして、レゴブロックで具体的な三瀬村の小さな拠点を制作し、それぞれ製作者の想いを伝えるワークショップが行われ、その状況についての説明がありました。 以上のような1年間の検討を踏まえ、藤山氏の総括として示されたのは、三瀬村全体としての①自治組織(まちづくり協議会など)をつくること、地域の産業や定住などに関わる②地域経営会社をつくること、そして地域の生活やコミュニティー活動の場となる③小さな拠点をつくることが、三瀬村に求められる地域の仕組みということでした。 なお、そのような取り組みが順調に展開されている例として、島根県邑南町出羽地区及びイタリアの中山間地における多彩な生業作りの状況の紹介があり、三瀬村で推奨されるシステムとして、地域外に流出しているお金を地域内で循環させるようなつながりや仕組みが有効であるとの説明がありました。 今回の報告を踏まえ、三瀬村の将来的な持続・発展のためには、少しでも早く具体的な取り組みに着手することが求められており、色々な立場の人が危機感を共有して連携していくことが重要であると強く印象づけられました。
真剣に聞き入った報告会でした。