循誘校区の歴史と文化遺産(長崎街道編2) 

豊福英二

豊福英二

 佐賀市内中心部の長崎街道は現在の白山商店街を通り、エスプラッツを抜け、呉服元町商店街に向かって通っていました。その呉服元町入り口辺りに上林茶店はあります。

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「上林家文書」標柱   

上林家文書
上林文書は上林茶店に大切に保管されています。上林茶店は佐賀鍋島家よりの招きを受け、明治初年に宇治(京都)より佐賀に移住しました。現在は創業以来400年に亘る伝統を受け継いで、最良品の八女茶・嬉野茶を取り扱っています。当店は天正年間(安土桃山時代)にお茶所の京都宇治にてお茶の栽培・製茶業を始め、江戸時代に入ると皇室・将軍家を始め諸大名家等を対象とする、手広く茶業を営むお茶師仲間の一団がありました。この一団は「御物仲間」と称して特別な格式を誇っていました。
上林三入はその御物仲間8家(のち11)の中の1家であって、鍋島勝茂は茶商上林を佐賀藩お抱えの「茶所」に任じ、かつ「永世用達」の命を下しました。それより以降、上林は佐賀藩の御用達茶師として毎年お茶を納入することとなり、鍋島家とは特に深い関わりを持つようになりました。
当店に伝わる「上林家文書」は、宇治の上林より鍋島家を始め各大名や旗本に茶を納入したときの請取状や礼状、及び年々の茶詰方の依頼状等々であります。初代藩主鍋島勝茂より鍋島直正に至るまでの鍋島家歴代藩主の書状等を始め、熊本の細川三斎・仙台の伊達政宗、及び沢庵宗彰・千宗易・金森宗和・小堀遠州・柳生宗矩等の書状が残っており、合計で1056点にも及ぶ貴重な一級資料となっています。上林家文書は昭和59(1984)に佐賀市の重要文化財に指定されました。

    

「鍋島勝茂」書状                                「鍋島直正」書状

「鍋島藩各藩主」書状      

 

愛宕神社(呉服元町)
長崎街道沿いの光明寺及び本陣跡より北に少し行くと愛宕神社があります。境内は広くはないものの、清々しさを感じる歴史ある神社です。祭神は加具突智神で、火伏せの神であります。
鳥居〈宝永7(1710)刻〉潜ると拝殿・本殿、社務所、阿吽の狛犬等があり、一方で地蔵菩薩堂、観世音菩薩堂、旭の森稲荷社、庚申塔〈元禄11(1698)刻の祠群等があり、神仏習合時代の名残りをうかがわせています。       

 

     愛宕神社の鳥居         愛宕神社と狛犬

 慶長5(1600)の関ケ原の戦いにおいて、鍋島勝茂は豊臣方に加わるも徳川方の勝利となりました。徳川方からは疑惑の眼が向けられ、改易の危機にありました。円光寺住職元佶等の仲介と鍋島直茂の忠誠もあり、柳川の立花宗茂を攻めることを条件に許されました。
この柳川出陣のとき、鍋島勝茂は鍋島生三に御祈祷を相頼まれ、京都愛宕山に祈願をしたところ、御利運相成となったため信仰を深められ、新堀端(呉服元町)のこの地に京都より愛宕社を勧請されました。国家御安全の長日祈祷、15町火災転除祈祷、配札等を行っていました。   
本地垂迹説(明治時代に入り神仏分離令(廃仏毀釈)により廃止) 
一方、愛宕権現は愛宕山の山岳信仰と修験道が混淆した神仏習合の神であり、イザナミを垂迹とし地蔵菩薩を本地としました。愛宕山白雲寺は勝軍地蔵(将軍地蔵)を本尊としたため、特に戦国時代においての愛宕権現は勝軍地蔵として敬まれ、武将からは戦の神として信仰を集めました。本地仏としての勝軍地蔵は、甲冑姿の地蔵菩薩が馬に乗っている像となっています。愛宕山白雲寺から勧請されて全国の愛宕社で祀られました。当神社でもこの勝軍地蔵が今も祀られており、貴重なものとなっています。
私が愛宕神社を訪れたとき、鎌坂氏子総代を中心に「夏の祭り」神事が執り行われていました。
平成28(2016)4月の熊本地震で倒壊した鳥居は再建されましたが、立派だった神門はまだ再建されていません。ただ再建を祈るのみであります。

勝軍山愛宕寺                         

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地蔵菩薩堂

愛宕寺は京都竹内御門跡の末寺で天台宗の寺院です。由緒書によると、「当寺江愛宕社御勧請有之」とあり、慶長5(1600)のこの時期以前から愛宕寺は修験地として存在していたものと考えられますが、詳しいところは分かっていません。
中興は公雄で、
正徳5年(1715)退すとあります。3世は慶寛で、寛延3年(1750)退すとあります。慶寛は二御丸護摩堂開基を仰せ付けられ、御本尊の不動尊を持越して安置しました。其末、宝琳院(鬼丸)へ移転し、またその後に東福院(背振山)へ転住仰せ付けられたという記録が残っています。境内には寺院の面影が残る地蔵菩薩堂や観音菩薩堂等が存立しています。                                                                  

以上、転用不可(豊福英二記)

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